プラスチックごみ問題

2020. 8.14

プラスチックごみ問題 ――「使い捨て」見直そう
論説委員・元村有希子 

論プラス(2020.7.16毎日新聞)より

 レジ袋の有料化が全国で始まった。プラスチックごみの削減が狙いだが、レジ袋が占める割合は2%に過ぎない。日本は、国民1人当たりの使い捨てプラ消費量が米国に次いで多い「使い捨て大国」だ。分別・収集の仕組みが確立されている半面、回収された後のリサイクルには課題が多い。有料化をきっかけに、プラスチックに過度に依存する生活を再認識したい。その根底にある使い捨て文化そのものも見直す時だ。

◇レジ袋規制は入り口
 京都府の保津(ほづ)川は、渓谷美を楽しむ船下りで知られる。外国人観光客向けの「ミシュラン・グリーンガイド」にも紹介され、地元・亀岡市にとっては貴重な観光資源だ。
 「雨の後はごみが増えます。ほとんどがプラスチック。木の枝に引っかかったレジ袋は、七夕さんの短冊みたいですよ」。120人の船頭が所属する保津川遊船企業組合の豊田知八(ともや)代表理事(54)は、雨で増水した川を見ながら語った。
 保津川には、12の支流や用水路からごみが流れ込む。拾っても拾ってもきりがない現状を変えようと、豊田さんたちの呼びかけで環境保全NPO「プロジェクト保津川」が発足した。自治会単位で流出原因を調べたり、月に1度のごみ拾いをしたりと、市民を巻き込んだ活動を続けてきた。
 市は昨年8月にレジ袋有料化を先行実施。マイバッグ持参率は85%に上がり、家庭から出るプラごみの量が減る成果も見えた。さらに今年3月には「レジ袋提供禁止条例」を成立させた。レジ袋の販売も禁止する。全国に例のない取り組みだ。
 来年1月の施行を前に、市民や小売店には不安や戸惑いも強い。桂川孝裕市長は「2030年にはプラごみを100%、資源として生かす。レジ袋で全てが解決するわけではないが、この問題をきっかけに身近な環境や生活のあり方を考えてもらいたい」と強調する。
 かつてプラごみは「燃えないごみ」として埋め立てられていた。だが、処分場はいずれ満杯になる。リサイクルへの転換が求められた。
 そのルールが、1997年施行の「容器包装リサイクル法(容リ法)」だ。消費者には分別、自治体には回収、事業者にはリサイクルと処理費用を負担する責任が規定された。
 メーカーで作る「プラスチック循環利用協会」によると、18年には国内で891万㌧のプラごみが発生し、うち750万㌧が活用された。「有効利用率」は84%だ。
 しかしその内訳を見ると、リサイクルが機能しているとは言いがたい。3分の2は燃やして発電などに使われた。「熱回収」と呼ばれる手法だが、国際的にはリサイクルとみなされない。地球温暖化への影響を考えれば熱回収の比率は減らしていくのが筋だ。
 プラスチックに再生する「マテリアルリサイクル」が思うように増えないのはなぜか。
 例えばマヨネーズの容器は、酸化を防ぎながら絞りやすくするため多層構造になっている。スナック菓子の袋は、内側にアルミが蒸着されている。ハムの包装も6種類のプラスチックによる複合材だ。ペットボトルのような単一素材と異なり、複合材はマテリアルリサイクルには向かないのだ。
 プラごみを化学的に処理して石油に近い状態に戻したり、製鉄の過程で利用したりするケミカルリサイクルも、技術的な壁などから進んでいない。
 プラごみの中には文房具や歯ブラシ、おもちゃなど、使い捨てではないプラスチックも含まれる。これらは容リ法の対象外のため、リサイクルするかどうかは自治体次第だ。

◇出さない戦略を着実に
 政府は19年に策定した「プラスチック資源循環戦略」で、35年までにプラごみを100%有効利用すると約束した。「30年までに使い捨てプラごみを25%減らす」という目標も掲げる。欧州連合(EU)が21年から使い捨てのプラ製食器などを禁じる方針を打ち出しているのに比べれば手ぬるい印象だが、達成は容易ではない。
 あらゆる種類のペットボトル飲料がどこでも買える。スーパーでは生鮮食品、加工食品ともにトレーやプラ製の容器に入っている。洗剤などの消耗品も、ほとんどがプラスチック容器。すべて使い捨てが前提だ。
 本気で減らそうと思えば、プラスチックに依存した生活を変えなければならない。日々の買い物を青果店、精肉店などの専門店で済ませる方法もあるが、鍋持参で豆腐を買う暮らしを実践できる人は限られる。
 環境省と内閣府が17年に実施した世論調査では、67%が「ごみ問題に関心がある」と答える一方、ペットボトル飲料や使い捨て食器を「買わない」人は13%にとどまった。
 とはいえ、海のプラごみによる環境汚染が注目され、社会の意識は高まっている。19年の大阪サミットでは、50年までに海への流出をゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が首脳宣言に盛り込まれた。
 流出は中国やアジアからが多い。日本の分別・収集のノウハウを提供するなど、国際貢献も急いでほしい。
 今年は新型コロナウイルスの影響で、持ち帰りや使い捨てが奨励されている。プラごみの収集量も増えている。
 「プラスチックだけでなく、使い捨て文化そのものを見直すべきだ」というのは、環境カウンセラーの瀬口亮子さんだ。
 容リ法によって、ペットボトルなどはリサイクルが進んだ。事業者に一定の責任も負わせた。瀬口さんはこれらを評価する一方で「リサイクル以前に、使い捨て容器包装の発生を抑制する仕組みを」と提唱する。
 韓国では、プラスチックかどうかにかかわらず過剰包装の抑制や使い捨て品の使用規制を盛り込んだ法律が90年代に作られた。レジ袋やホテル客室の歯ブラシは有料で提供、ファストフード店も一定規模以上の店舗では店内飲食の客に使い捨て食器で提供することを禁じている。
 「自主的に削減できるのは意識の高い人に限られる。でも法律や制度という仕組みを作ることで、より多くの人々の行動を変え、高い効果が期待できる」
 レジ袋有料化で対象外となった生分解性プラやバイオマスプラは、コストが高いことに加えて環境負荷がゼロではない。使い捨てが減らない懸念が指摘されている。将来に向けて、代替素材としての可能性を見極めることが必要だ。同時に、社会にどう取り入れるかについても検討を始めるべきだ。
 プラごみの問題は、資源の持続可能性、生態系保全、温暖化問題などさまざまな要素をはらむ。個々人の姿勢や実践が問われることは言うまでもない。

和尚からの蛇足

 プラスチックごみに対する意識はレジ袋の有料化が始まって、確かに変わってきていると思う。これがどこまで具体的な行動まで変えていくかどうかは疑問が残る。

 レジ袋が占める割合は2%に過ぎないという。お店で何か買えば使い捨てのプラ容器がレジ袋よりも量的に多く使われている。これがいつも気にかかっていた。過剰包装といってもいいような状態なのである。これを何とかしなければと思うのは当然のことだろう。

 お寺に置いてあるゴミ籠には何時の頃からか生花を包むビニール包装ですぐに一杯になるようになった。古い花殻〔はながら〕や使い捨ての包装を片付けるのはそれなりの作業量となっている。いっそゴミ籠を置かないようにしようかとも思うが、なかなかそういうわけにもいかない。ゴミ籠を置いていないお寺もあるとは聞いてはいるが・・・。

 思い出したことがある。以前山小屋に泊まったとき、ある宿泊者が小屋のスタッフにゴミ箱はありますかと尋ねていた。山小屋にはゴミ箱は置いていませんときっぱりと答えていた。登山者としての常識だが自分の出したゴミは自分で持って帰ることをその人は知らなかったのだ。

 昔はゴミ箱はどこにも有ったように思う。でも最近はコンビニ・高速道路のサービスエリアにあるのがせいぜいでその他ではあまり見かけなくなったように思う。そこらに捨てるのは法外としても持って帰るのが原則なのではないでしょうか。それによってレジ袋の有料化以上にプラゴミの使い捨てに対する意識は変わってくるのではと私も期待したい。
それには韓国のように、「プラスチックかどうかにかかわらず過剰包装の抑制や使い捨て品の使用規制」をすべきでしょう。

 禅宗で言うように「世の中には無駄なものはひとつもない。すべて生かして使うのだ」という教えも今では時代にそぐわなくなってしまった。だからこそ抑制とともに、一層努力してゴミの資源化を考え、知恵を使っていかなければならないでしょう。

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