文庫本『ブッダが説いたこと』のすすめ

2019.11.27

『ブッダが説いたこと』        

 著者 ワールポラ・ラーフラ長老 岩波文庫

 

 

 

 

 

 ″WHAT THE BUDDHA TAUGHT″ 上記の英語版

 

 

 

 

 

  ワールポラ・ラーフラ長老

 

 

 

和尚からの蛇足

 1978年8月、私はインドのカルカッタ(現コルカタ)空港から空路、マドラス(現チェンナイ)経由でスリランカのコロンボ空港に到着しました。その後ラトラマーナ(Mt.ラビニア)にあるパラマダンマ・チェーティア寺院に移りました。

 始めにその寺にあったゲストハウスに滞在しました。そこでお会いしたのが当時ヨーロッパから帰国していたワールポラ・ラーフラ長老でした。私はまもなく高熱の症状に襲われました。その時には知らなかったのですが後でデング熱だと知りました。長老とは簡単な会話をしたのみでしたが、長老が野菜中心の精進料理を食されていたことが大変印象に残りました。

 病も癒え、寺院でテーラワーダ仏教の得度を受けた後、近くにあった寺院の教育施設に移りそこでの一年間の生活が始まりました。その施設は元病院の平屋の建物を改造し、宿舎と教室にしていました。元手術室は礼拝所でした。スリランカ中から集まった十人ほどの僧侶、他にタイ・シンガポール・インドネシアそして日本からの私などの僧で構成されていました。

 一年の生活を終え、日本に戻って授業寺〔じゅごうじ〕(弟子入りした寺)の手伝いをした後、僧堂時代に一緒だった同夏〔どうげ〕(=同期僧)が住職していた京都の寺にしばらく居候をしました。そのとき近くにあった健康食品の店で、マクロビオテックの本と共に英語版の長老の″WHAT THE BUDDHA TAUGHT″が棚に並んでいたのを見つけ、たいへん驚きました。もちろんすぐに購入しました。それにしてもなぜこのような本屋でもない店にあるのか謎でした。もちろん未だに分かりません。

 そして三十年以上経過した2016年、このホームページの第1回目のリニューアルと同時に仏教の勉強をやり直そうと資料を探していました。そしたら岩波文庫の中に長老の書かれた本が日本語に訳され、『ブッダが説いたこと』という題で出版されたばかりのこの本を見つけびっくりしました。日本語訳された今枝由郎氏が、訳者あとがきで「本書の訳出には、二重の不思議な縁を感じる。」と書いています。私もあえて言えば、同様に著者とこの本に「三重の縁」を感じます。一つは長老との出会い、二つには英語版との出会い、三つ目はこの日本語版との出会いです。これを勝縁というのではないかとありがたく思っています。

 私は恥ずかしいことに買ってあった英語版には目を通していませんでしたが、今回日本語版で読んでみました。仏教概論を分かりやすく書いてあるすぐれた本であると思います。両方あるとパーリ語の相当語は英語版で確認できます。

 著者は「仏教に造詣はないけれども、ブッダが本当に何を説いたのかを知ろうとする、教育があり、知性のある一般読者を対象に著した」と記している、と訳者は解説で引用していますが、さらに「日本人読者にとっては、まずは今まで慣れ親しんでいる『日本仏教』の既成概念をきっぱりと捨て去り、まったくの白紙に戻ることが重要で、前提条件である。その上で初心に戻り、素直に本書を読んだとき、まったく新しい『仏教』が現れてくるであろう。」と述べています。そして「ブッダは道を示したに過ぎず、その道を歩むか否かは、ひとえに私たち一人ひとりの選択・努力にかかっている」と結んでいますが、まったく同感です。

 テーラワーダ仏教学の長老による著作で、小乗仏教・大乗仏教とこだわる人には抵抗を感じるかもしれません。禅を学び、テーラワーダ仏教を学んで、また禅の修行に戻った身としてはそんなことにこだわることよりも真のブッダの声に耳を傾けたら如何でしょうか。

 入門書として、また仏教に造詣ある人にも仏教を深めるためにもお薦めします。
いま思えば、スリランカに行く前にこの本(もちろん日本語版は未出版)を読んでいたらと悔やまれます。ブッダの説話もふんだんにあるので、読み物としても読めると思います。
みなさんが読まれることを希望します。

(初掲載2016年6月10日)

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